国鉄分割民営化直前の1987年(昭和62年)3月23日のダイヤ改正により、本四備讃線の開業に先立って、香川県内の予讃本線高松 - 坂出間、多度津 - 観音寺間および土讃本線多度津 - 琴平間が四国の国鉄路線として初めて電化されることとなり、その区間用電車として121系が2両編成19本38両が製造された。民営化にあたっては全車両が四国旅客鉄道(JR四国)に承継された。経営基盤が脆弱とされたJR四国に対する将来の布石といった意味合いで国鉄が残した車両の一つである。

 121系は高松方からクモハ121形 (Mc) - クハ120形 (Tc') の2両固定編成で、電動車と付随車の構成(MT比)は1M1Tであり、2両編成19本(38両)が在籍した。全車両が国鉄時代に製造され、JR発足後の追加製造は行われていない。四国島内の検修施設の関係で、編成全体が逆向きとされている。

車体

 205系に類似した軽量ステンレス製車体で、前面中央には貫通扉を備えている。側面は211系と同様の戸袋窓のある片側3扉配置である。扉は半自動(停車時に手動で開閉する)の設定が可能で、開閉用の取手が取付けられているほか、ホーム有効長の短い駅での客扱に備えて選択開閉ができるようになっている。窓は205系などとは開閉方向が上下逆の1段上昇式を採用し(205系量産車は1段下降式)、良好な視界を保ちつつ製造コスト削減を図っている。
 車体幅は205系と同じ2,800mmとし、近郊形電車ではあるものの、105系や119系などと同様な裾絞りのない車体となった。前面スタイルは前年に登場した207系900番台に準じるものの、幌枠が設置されていることや、貫通扉が211系に準じたステンレス無塗装のものであるため、印象は異なる。窓を1段上昇式としたため、側面幕板部に行先表示器を設置できず、方向板(いわゆるサボ)を使用していた。また前面の行先表示器も手動式である。
 ステンレス製の車体のため基本的に無塗装で、前面周囲のFRP部は銀色に塗装されている。また、新製時にはピンクに近い赤色である赤14号の帯を配していたが、四国旅客鉄道に承継されて間もなく同社のコーポレートカラーである水色(青色26号)に変更された。

台車・機器

 台車および主幹制御器などの各種機器については、当時の国鉄の財政状況を鑑み、新製費用を抑えるために可能な限り廃車車両の発生品を流用している。制御電動車(クモハ121形)の台車は103系で採用されているDT33形をベースにブレーキシリンダやばねなどを改良したDT33A形台車を使用しているが、一部はDT33形の発生品である。制御車(クハ120形)の台車は101系から流用したDT21T形である。主電動機はMT55A形、主制御器はCS51A形、主抵抗器は自然冷却式のMR166形、空気圧縮機はC-1000形であり、主電動機を4個永久直列とし、抵抗制御で力行と発電ブレーキを制御するなどの基本的な構成は105系と同一である。

 補助電源装置は当初、485系サシ481形などの食堂車の廃車発生品である70kVAの電動発電機 (MG) をクモハ121形に装備していたが、トラブルが多発したため、1998年(平成10年)から2001年(平成13年)にかけて静止形インバータ (SIV) に交換された。車両番号の末尾18,19の編成はクモハ121形のMGを撤去し、111系の廃車発生品のSIV (S-SIV90/90kVA) をクハ120形の床下に、その他の編成はクモハ121形のMGを撤去し、その跡にSIV (S-SIV70/70kVA) を設置した。

 ブレーキ装置は、205系や211系と同一の発電ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキが採用されたが、気動車などに操作方法を合わせるため、運転台は縦軸2ハンドル式である。 先頭車前面の連結器には、解結作業の迅速化、効率化を図るため電気連結器と自動解結装置が装備された。電気連結器は7000系と線番号を合わせているため併結可能とされているが、起動加速度の違いにより実際に併結運用はない。 また、将来の3両運転を想定し、妻面の連結器は棒連結器ではなく密着連結器を採用した。
 集電装置は廃車発生品のPS16形パンタグラフが搭載されたが、1992年(平成4年)に予讃線の観音寺 - 新居浜間が電化され、狭小トンネルがある箕浦駅以西にも入線できるよう7000系と同じS-PS58形に交換された。

車内設備

 他の近郊形電車にならって、座席は扉間に対面式固定クロスシート(ボックスシート)を配し、客用扉付近の戸袋部と車端部にロングシートを配したいわゆるセミクロスシートである。クロスシートの背もたれの通路側がやや斜めにカットされ、大形の手摺が取付けられている。新製当初から冷房装置 (AU79A/33,000kcal/h) も搭載された。天井部は平天井構造とされ、冷風の吹出しはラインフロー式である。
 高松近郊の短距離区間での運用を想定していたため、灰皿は落成時点から省略されており、トイレも設置されていない。
 落成当時、ドア横に半自動扱時の操作ボタンは無く、半自動扱の際は115系のようにドアを手で開けていたが、のちに操作ボタンが設置された。

運用

 121系は製造から30年程度が経過していたことから、足回りや客室設備内外の大幅リニューアルを施工し、7200系に形式名を変更することとなった。2018年度中に全車が7200系への改造を終えた。
 121系は、JR発足までに全編成が高松運転所に配置され、その後も一貫して同所への配置が続いていた。2両編成を基本とし、改造された第1・2編成を除きワンマン運転には対応していなかった。高松近郊の予讃線・伊予西条 - 高松間、土讃線・多度津 - 琴平間で普通電車や快速「サンポート」に使用されていた。またトイレがないことと、側窓が上昇式になっていることから、本四備讃線(瀬戸大橋線)での営業運転には入らなかった。予備車の配置がない113系の代走としても使用されたが、前述の理由により瀬戸大橋線とそれに関連する運用は代走は行わずに113系が限定使用された。





参考出展:https://ja.wikipedia.org





普通 121系 予讃線




普通 121系 予讃線 海岸寺ー詫間




普通 121系 予讃線 海岸寺ー詫間




普通 121系 予讃線 丸亀ー讃岐塩屋




121系主要諸元

形式 121系
運用者 日本国有鉄道
JR四国
製造所 川崎重工業
日立製作所
近畿車輛
東急車輌製造
製造年  1987年
製造数   19編成38両
電気方式 DC1500V 
最高運転速度 100 km/h
全長 20,000 mm
全幅 2,832 mm
全高 3,935 mm
車体  ステンレス鋼
編成定員 118名
132名(ワンマン車)
台車  DT33・DT33A
DT21
主電動機 直流直巻電動機
MT55A
出力 440kW
駆動方式 中空軸平行カルダン
撓み継手方式
制御方式 抵抗制御(永久直列)
弱め界磁
制御装置 CS51A 
制動装置  電気指令式ブレーキ
(発電ブレーキ・応荷重付)
保安装置  ATS-SS





121系編成表


配置:高松運転所

編成
番号
クハ120( Tc)'+クモハ121(Mc)  製造所 新製日  備考
 1 クハ120 1+クモハ121 1  日立  86.11.17 7200系に改造 18.10.12
 2 クハ120 2+クモハ121 2  近車  86.11.20 7200系に改造 19.02.18
 3 クハ120 3+クモハ121 3  川重  86.12.13 7200系に改造 16.03.15
 4 クハ120 4+クモハ121 4  川重  86.12.13 7200系に改造 16.09.09
 5 クハ120 5+クモハ121 5  近車  86.12.27 7200系に改造 17.03.28
 6 クハ120 6+クモハ121 6  近車  86.12.27 7200系に改造 18.02.20
 7 クハ120 7+クモハ121 7  近車  86.12.27 7200系に改造 17.11.07
 8 クハ120 8+クモハ121 8  東急  87.01.27 7200系に改造 17.06.05
 9 クハ120 9+クモハ121 9  東急  87.01.27 7200系に改造 16.02.28
 10 クハ120 10+クモハ121 10  東急  87.01.27 7200系に改造 18.08.22
 11 クハ120 11+クモハ121 11  東急  87.01.27 7200系に改造 17.12.28 
 12 クハ120 12+クモハ121 12  日立  87.01.13 7200系に改造 18.07.02 
 13 クハ120 13+クモハ121 13  日立  87.01.27 7200系に改造 16.10.28 
 14 クハ120 14+クモハ121 14  日立  87.01.27 7200系に改造 16.12.06 
 15 クハ120 15+クモハ121 15  川重  87.01.16 7200系に改造 17.09.13  
 16 クハ120 16+クモハ121 16  川重  87.01.16 7200系に改造 16.01.18 
 17 クハ120 17+クモハ121 17  川重  87.01.16 7200系に改造 17.07.20 
 18 クハ120 18+クモハ121 18  近車  87.01.20 7200系に改造 18.12.11
 19 クハ120 19+クモハ121 19  近車  87.01.20 7200系に改造 18.03.28 





















121系